何故私が講師要件を「よい介護現場での経験10年」にこだわるのか??
- 2025年7月31日
- 読了時間: 6分

こんにちは。介護講師の小森敏雄です。
「介護講師になりたいと思っているのですが、どれくらいの現場経験が必要ですか?」
最近、本当によく聞かれる質問です。
研修会場やDM、SNSでも、若い世代や意欲ある介護職の方からこのような相談を受けるようになりました。
私はいつも、こう答えています。
――「10年は必要です。ただし“良い現場での10年”が前提です」
これは決して、長く働いた年数だけを求めているのではありません。
この記事では、「なぜ10年なのか?」「なぜ“良い”現場である必要があるのか?」
その理由を、私の経験を交えて詳しくお伝えします。
【第1章】介護講師とは、“現場を語る”専門職である
介護講師とは、ただの「話し手」ではありません。
教科書やスライドを使って講義するだけなら、誰でもできてしまいます。
でも、受講生が本当に聞きたいのはそこではありません。
受講生の多くは現場で働いている、もしくはこれから働く人たちです。
その人たちが求めているのは、「現場に即したリアルな話」です。
・利用者の拒否が強かったとき、どう接していたか?
・認知症の方の周辺症状に、どう対応していたか?
・看取りの場面で、どんな声かけをしたのか?
これらは、現場で実際に向き合ってきた人でなければ語れません。
それも、ただ働いていたのではなく、「良い介護を目指して」真剣に取り組んできた人にしか出せない言葉です。
【第2章】“長くいる”ことと、“育ってきた”ことは別物
「もう10年働いているから、講師もできるかも」
そう思ったことがある人もいるかもしれません。
ですが、私はここであえて言います。
――“ただ長くいた”だけでは、講師としては不十分です。
なぜなら、10年のうちにどんなことを経験し、どんな力を育ててきたか?
そこに講師としての土台が宿るからです。
私が知っている、受講生の心をつかむ講師には共通点があります。
それは、「介護の仕事を、ただのルーティンにしなかった人」だということ。
・今日の入浴介助、どこに意味があるかを考えていた
・利用者の食事のペースが変わったら、必ずチームで話し合っていた
・新人職員にも「なぜこのケアをするのか」を丁寧に伝えていた
こうした積み重ねが、後の講義の言葉に深みを与えてくれるのです。
【第3章】“良い現場”とは何か?7つの特徴
では、そもそも「良い現場」とは何を指すのでしょうか。
以下に、私が考える“良い現場”の特徴を7つ挙げてみます。
利用者一人ひとりに合わせた個別ケアが実践されている
チーム内で話し合いや情報共有が活発である
職員の言葉遣いや接し方に敬意がある
記録が単なる“業務日誌”ではなく、気づきの蓄積になっている
失敗やミスを責めるのではなく、学び合う風土がある
職員自身がケアの意味を考えられる雰囲気がある
利用者の人生背景に目を向ける視点がある
こうした環境で育った10年は、ただの10年とは“密度”が違います。
ケアの「本質」を肌で感じてきた人にしか話せないことが、そこにあります。
【第4章】講師として必要なのは「再現できる経験」
良い現場での経験には、もう一つの大きな価値があります。
それは、再現性です。
講義というのは、相手に「明日から現場で使えるヒント」を渡す場です。
つまり、「それは小森さんだからできたんでしょ?」で終わっては意味がない。
私が講師として伝えているのは、こういうことです。
・こういう場面で、こう声をかけたら穏やかに対応できた
・拒否があった方に、まず環境を変えることでアプローチした
・職員同士で共有するとき、こんな言葉を使った
これらは、誰でもやろうと思えばできる行動です。
それを伝えるには、自分の現場での気づきや失敗も包み隠さず語れることが必要です。
それができるのは、試行錯誤してきた“良い10年”を積んできた人だけです。
【第5章】「個別ケアの実践者」が講師にふさわしい理由
介護講師として価値を持つのは、個別ケアをやってきた人です。
マニュアル通りにやってきた人ではなく、
目の前の利用者の“その人らしさ”を大切にしてきた人。
・認知症の方が落ち着く言葉がけを探り続けた日々
・トイレ誘導を嫌がる方の“こだわり”を一緒に紐解いていった経験
・看取りの最期の時間に、ご家族と過ごした静かな瞬間
こうした経験は、言葉にすればするほど講義の“温度”になります。
介護という仕事の本質は、“人と向き合う力”です。
その本質に近づこうと努力してきた人にこそ、講師という仕事はふさわしいのです。
【第6章】10年は自信になる。そして“支え”になる
私は今でこそ、全国で講義をさせてもらうようになりましたが、最初の頃は不安で仕方がありませんでした。
・受講生から質問されたとき、答えられるだろうか
・自分の話は伝わっているのだろうか
・そもそも自分が前に立つ資格があるのか…
そんなとき、私の背中を押してくれたのは、やはり「現場で過ごした10年」でした。
「10年間、ずっとあの人たちと向き合ってきた」
「どんなに辛くても、逃げずに関わってきた」
そう胸を張って言える時間が、私にとって最大の武器になりました。
それは、これから講師を目指すあなたにも、きっと同じように力になるはずです。
【第7章】「まだ早い」と思っているあなたへ
「自分にはまだ早い気がする」
「もっと勉強してからでないと…」
そう思って立ち止まっている方も多いでしょう。
でも、私はこう伝えたい。
――「その“学びたい”という気持ちこそが、講師にふさわしい資質です」
完璧な人なんていません。
私も、今でも失敗するし、反省することばかりです。
でも、良い現場で積み重ねた経験は、必ず誰かの役に立ちます。
それを「伝えよう」と決意した時点で、あなたの言葉には価値が生まれます。
まずは、自分の経験を棚卸ししてみてください。
・自分が大切にしてきたケアは?
・自分が支えてきた利用者は?
・自分が仲間とともに乗り越えた困難は?
その一つひとつが、講義の“種”になります。
【おわりに】講師とは、誰よりも「介護を信じている人」
最後に一つだけ、私が大事にしている考えをお伝えして終わります。
介護講師とは、介護という仕事を誰よりも“信じている人”だと思うのです。
現場の価値、ケアの力、人の可能性。
それらを信じているからこそ、「伝えたい」と思うのだと思います。
だからこそ、まずは良い現場での経験をしっかり積んでください。
その経験があなたを支え、講師としての道を照らしてくれるはずです。
あなたの介護人生が、誰かの学びになる日を、私は楽しみにしています。
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